<株式会社エフエム東京 第319回放送番組審議会議事録>
1.開催年月日:平成17年2月8日(火)
2.開催場所 :エフエム東京 本社10階大会議室
3.出席委員(6名)
子 安 美知子 副委員長 内 木 文 英 委員
青 池 愼 一 委員 伊豫田 康 弘 委員
横 森 美奈子 委員 内 館 牧 子 委員
4.番組試聴
「JFN Special TheBridge
Over2004-2005」
2004年12月31日 22時~25時放送分
【番 組 名】「JFN
Special TheBridge
Over2004-2005」
【放送日時】 2004年12月31日 22時~25時放送
【番組概要】
●企画意図:新潟中越地震をはじめとする自然災害の数々、選挙、アテネ、凶悪犯罪、プロ野球再編問題など多くの様相で記憶される04年の日本列島。これらの出来事を通して、不安を感じながらも人々は自身の心に様々な問いかけをした年でもありました。そのような背景を鑑み、今回の年末特番ではラジオを通して希望を感じてもらい、生きる力が沸き起こるような演出を目指しました。悲しい結果となった出来事さえも、そこから学び、リセットし、リスナーひとりひとりの心に刻まれている2004年をかけがえのない年としながら、2005年へと橋渡しとするべく以下のような企画で構成しました。
●今年の顔によるハートダイアリー:今年の顔として日記コメントを寄せてくれた著名人は、渡辺謙、サトエリ、オレンジレンジ、石田衣良、北島康介、ガレッジセール、辛酸なめ子、武田鉄也、長谷川理恵……、笑い、感動、喜び、苦しみ、さまざまな感情とともに過ぎ去ったそれぞれの2004年をダイレクトに届けることができた。NYなどの年の瀬風景を中継、地球を感じさせながらリスナーからも忘れられない1日を日記スタイルで募集したが、その紹介の際に、暖かくかつ力強い音色のスティールパン・オーケストラの生演奏をBGMに して、生の感動を前面に押し出した。
●若手アーティストによる新潟中越地震スケッチ日記100枚:新潟中越地震こそ、今年忘れ去られてはいけない出来事だった。地震での被害は直接的なものだけでなく、何年も後まで精神的、経済的、さまざまな面で被災者にのしかかってくる。中越地震が人々の話題にのぼらなくなったときからが、被災者の本当の戦いとも言われている。番組では数日間に渡る取材を敢行、被災した人々の本当の姿を、現在ヨーロッパを中心に人気の新進気鋭のアーティスト、タカノ綾がスケッチ取材。上越新幹線の越後湯沢~長岡間が再開した日から取材開始。雪のつもる仮設住宅に訪れて人々をスケッチしたり、ボランティアセンターで子供たちと触れ合ったりしながら、崩壊した牧場の動物や歴史的な建造物、自然の美しい村や思い出が詰まった民家などを100枚のスケッチとして残した。番組内ではタカノによるモノローグと、現地でのインタビュー、SEなどでラジオド キュメンタリーに仕上げた。被災地の人々のたくましさ、感謝の心、復興への力強い動きなどを盛り込んだ。彼らの明るさに、逆に元気をもらい、行ってよかったと思わずもらすタカノのモノローグにパーソナリティの村上隆自身が涙するシーンもあった。
●Webサイト連動&Tシャツ:今回新潟スケッチを敢行したタカノ綾は、ビョークが作品を購入したり、イッセイミヤケとのコラボレーションで話題を呼んだり、海外での評価も高いアーティストである。彼女のスケッチした貴重な作品群を、Webにより完全に見られるようにした。作品からは、写真だけではつたわらないような新潟のさまざまな表情が伝えられた。また今回の番組のための描き下ろしの作品を完全オリジナルのTシャツにし、限定50枚のリスナープレゼントにした。
●サムライ対談:長渕剛VS村上隆:音楽、アート、どちらもトップの地位にいるものどうしの異色対談が実現させた。ともに、自分の道を信じて突き進んできた1匹狼ならではの、生きる知恵や、力強さを表現した。キーワードは「野生」。05年、不安を希望に変えるほど、力強い対談だった。
●エコ対談:小林武史VS村上隆:アーティストが地球のために、人のために、出来ることを実行した音楽プロデューサー、小林武史。アーティストとしてためたお金を環境のために融資をする……銀行という斬新なシステムを編み出した。同じアーティストとして、どうすれば環境を守ることができるかに悩み続けてきた村上が、小林にさまざまな質問をなげかけた。深いレベルでのボランティア、環境問題への取り組み方を提示した。
●野口健、屋久島ドキュメンタリー:屋久島で10代の若者たちに、自然とふれあいながら、環境に関する大切なことを伝えていったアルピニスト野口健環境学校ドキュメンタリー。スタッフを派遣し、自然の美しい音の中で、地球の美しさに出会い、環境問題に直面する若者の姿を取材、オンエアした。
●担当所感:アーティストとして世界的名声を獲得しつつも常に斬新な意見を提示しつづける村上隆という個性的な分子と、取材による生の人々の声や、日記コメント、自然が感じられる音などを共存させることに成功、個性的なメッセージを送りつつも、人肌の感じられる普遍的で温かい番組になった。村上氏自身、年越し特番は昨年に続いて2度目ということもあり、番組全体を俯瞰しながらメリハリのあるトークを展開できた。反省点としては、精度を高めるために内容を盛り込みすぎ、予定調和を破壊するフリートークを持たせるで余裕がなかったことが挙げられる。
〈出 演〉村上隆/柴田玲
〈ゲスト〉長渕剛/小林武史/渡辺謙/サトエリ/オレンジレンジ/石田衣良/
北島康介/ガレッジセール/辛酸なめ子/武田鉄也/長谷川理恵
(試聴時間:約30分)
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◇ 3時間番組を短く編集しているので、全体的に印象が散漫になってしまう。コメントも難しい。ラジオは生活の中で聴くものであるから、この番組をどのようなシチュエーションで聴けば一番“はまる”か、ということを考えながら聴いていた。そのような視点から、今回の番組は大晦日という特別な状況での放送で、どのようなシチュエーションで聴いていれば一番“はまる”のか、ということが非常につかみにくい番組であった。
標準で考えると、大晦日は大掃除も終わってゆっくりしている。そのような状況でわざわざラジオを聴くのか?もちろん仕事をしている人や車で走っている人もいると思うが、自分としては、「この感じ」というのがつかみにくかった。
アイデアとしては、インタビューではなくコメントを読んで聴かせてくれる演出は、説得力もあり、新鮮で面白かった。部分的には面白いところもあったが、なぜ村上隆がパーソナリティなのか?柴田玲との組み合わせに必然性があったのか?など疑問に思うこともあった。感想も散漫になってしまったが、感じたことを言わせて頂いた。
◇
大方の人は家で食事をして、お酒も入っている状態であろう大晦日の夜に、この番組はどれくらい聴かれていたのであろう?村上隆氏の「資本主義とは違うパワー・・・」など耳に馴染まない言葉やフレーズも出てきて、全体的にザワザワとした印象を受けるこの番組が、雪がしんしんと降る大晦日の夜にどれくらいの人に聴かれていたのか気になった。
また、タカノ綾さんに対する電話取材については、最近の若い人全般に言えることだが、電話での話し方が下手であるため、聴き取りにくい。このような電話インタビューで長々と番組をつないでしまって良かったのか、疑問が残った。
全体的に色々な要素を盛り込みすぎてしまっており、印象が散漫になってしまう。たとえば、もっと新潟の被災地に的を絞るやり方もあったと思う。また、柴田玲が名乗る時に毎回「TOKYO FMの」をつけるのはくどいような気がした。“2004年から2005年の架け橋“、色々な意味合いを込めたこのタイトルが活かしきれていない印象を持った。
◇
作るのも大変難しい番組だと思った。年の瀬の最後の番組、色々なものを網羅して、何もかも放送しなければいけない気持ちになったのであろう。しかし、それは無理であるような気がする。新潟県中越地震に的を絞るという話しもあったが、そういう出来事を取り上げるのがいいのか、それともそれから離れた方がいいのか、分からない。暮れから正月にかけての3時間の特別番組、どうやって番組を作ればいいのか?そういう迷いが、番組を聴いていて物事が集中してこないところに、表れているのであろうと思った。
◇
部分的にはキラッと光るものはあるが、全体的な流れがよく見えてこなかった。この番組における新潟取材の位置付けが良く分からないが、もっと新潟の人間を浮き彫りにしても良かったと思う。殺人や誘拐などの事件が多発し、人と人とのぬくもりや思いやりが失われているこのような時代に、新潟の極限に置かれた被災地の人々の他人に対する優しさや気遣いを取り上げて頂くことにより、2005年の日本に対する希望をみせてくれても良かったかなと思った。
【番組制作部長の話】
今回は3時間の番組を30分に編集するというジレンマがあった。基本的な番組コンセプトは“人と人とのつながり”。番組は大きな3つのブロックから構成されている。第一部はリスナーや著名人からの“ハートダイアリー”を紹介する。第二部は新潟の被災地域の取材。第3部としては屋久島の自然が脈々と生命を繋ぎ止めている様子を取材した番組を年明けに放送した。この3つのブロックを通じて、“人はつながっている”ということを感じてもらえるように、番組を作った。
また、この番組における新潟取材の位置付けは、3時間番組の中の11時台1時間をまるごとそれにあてている。30分の試聴用の番組ではそれが3分くらいに短縮されているので、散漫な印象になってしまったのだと思う。
◇
この番組については成功したと思う。実際に24時ちょっと前から聴いていた。このような番組においては、3時間もあるため、都合のつく人が都合のつく時間にそこだけ聴けば良い、と考えるとドラマのような極端なほどの統一感は必要が無いと思う。ただ、極端なことを言うと、新潟の被災地の状況は年末にわざわざ聴きたい内容ではないところ、それを年末にうまく聴かせてくれそうな人を揃えておいて、それを活かせるだけの工夫や構成が無かったのが、非常に残念だと思った。
タカノ綾の作品はとても良いと思った。特に、色々な状況がある中からの題材の切り取り方が素晴らしい。こういったものがありながら、それをうまく活かせていなかった。彼女の欠点、すなわち語りを中心に据えてしまったのが、非常に残念だった。これほど凄い絵を描いているということを、もっと活かせなかったのが、勿体なかった。
村上氏のコメントはありきたりだと思った。そこを、今回は柴田玲さんが救っていた。個人的には、彼女が毎回「TOKYO FMの」とつけることに好感を持っていた。タレントと一線を画す、という意味で、彼女がタレントではない立場から、きっちりとした言葉でコメントをしていたのが非常に良かった。
全体を通じて、プロデュースをしている人が出演者の一番良いところをもっと活かして番組を作れたら、もっと良いものができたと思う。
◇
作品としてどんなことを言われようが、この番組はずっととっておいてほしいと思う。たとえば60年前に終わった太平洋戦争。終戦時にはそれぞれの人がそれぞれの体験を持っていた。そして、30年後、40年後にその戦時中の体験記や記録を書くことがある。敗戦、という大きな出来事はそんなにあることではない。それは今回の地震も同じことである。そういった時に、人々がそれぞれの言葉でそれぞれが体験したことを残しておくことは、非常に大切なことである。そういう意味で、この番組は貴重な資料としてとっておいて頂きたい。何十年後かにこの出来事を振り返ったときに、何か重要なことが発見できるかもしれない。今、人間の意識の奥深くで何かが変わろうとしている。何十年後かに振り返った時に、この出来事が何かの要素になっているかもしれない。
以 上