三協フロンテア presents The Starters(ザ スターターズ)

パーソナリティ ユージ・吉田明世20代~30代の若手起業家をゲストに迎え、
彼らがどんな発想や未来への展望を持ってブレイクスルーを起こそうとしているのかお話を伺います。
高い意識とモチベーションで社会に風穴を開けようと取り組む彼らの話が、
「あなたも、世の中を変えられる!」という、
朝、仕事へ向かうビジネスパーソンのやる気のカンフル剤になることを目指してゆきます。

Guest ゲスト

2025.07.22

宇宙をより身近に

株式会社アクセルスペースホールディングス
代表取締役
中村友哉
小型人工衛星ビジネスを手がける宇宙ベンチャー


ONE MORNING「 The Starters 」
火曜日のこの時間は社会に風穴を開けようと取り組む若き起業家をお迎えして
そのアイデアの根っこにあるものや未来へ向けたビジョンを伺います

今週と先週のゲストは、株式会社アクセルスペースホールディングス 代表取締役の中村友哉さんです。
中村さんは東京大学大学院在学中に世界初めて、大学生による超小型衛星の打ち上げと軌道上での運用に成功し、卒業後、特任研究員を経て、2008年に株式会社アクセルスペースホールディングスを設立されています。2022年に、ジャパン・ベンチャー・アワードで最高賞の経済産業大臣賞を受賞されています。
今週は主な事業内容について伺います。アクセルスペースは、どんなサービスを提供されているんでしょうか?

「アクセルスペースは、小型の人工衛星を使ったさまざまなビジネスを展開しています。設立してからこれまでに合計11機の人工衛星を作って、実際に打ち上げ・運用してきています。この衛星の使い道なんですけれども、簡単に言うと、地球の写真を撮って、その写真を使ったさまざまなサービスを展開する「AxelGlobe」というビジネス。そして、現在宇宙ビジネスが非常に盛り上がってきているのを知ってるかなと思うんですけれども、そんな中で衛星を作りたいというお客さんも増えていますので、そういった人たち向けに実際に衛星を作る「AxelLiner」というサービス。この2つを展開しています。」

地球の写真を撮る「AxelGlobe」について、具体的にどんな分野で利用されているんですか?

「画像ですのでいろいろな使い方があるんですけれども、よく知られているのが農業かなと思います。日本の畑は、小さいので衛星で見る必要はあまりないのですが、例えばオーストラリアなどは、地平線の果てまで自分の畑ということがあります。そういった広大な畑では、作物の生育状況を確認するときに、一般的には飛行機を使うケースもあるんですが、衛星は数メートル単位で見られる他、実は衛星画像を使った方がお安いんです。」

冒頭で小型衛星を開発しているとおっしゃっていたと思うのですが、小型というのはどれぐらいの大きさまで小型なんでしょうか?

「大型と言う場合には、大体バスぐらいの大きさが大型ですね。我々は100キログラムから200キログラム辺りの小型の冷蔵庫ぐらいのサイズの衛星を扱っています。」

そんな小さいサイズ衛星でいろいろな情報が宇宙から分かってしまうんですね。その他にどういったものに使われていますか?

「国土管理なんかにも使用されていますね、横幅50キロぐらい広い範囲の情報を一度に取れることが特徴ですので、例えば、我々モルディブと一緒にビジネスをやってるんですが、海岸線が後退などの動きを時系列順に見ていくことができますので、政府がそうしたデータを使って政策を考えるためにも使われますし、森林の違法伐採なども見つけることができます。アマゾンなんかだと勝手にかられてもわからないですよね。でも上から見たら1発で分かります。地球で何が起きているかファクトを見るという意味では、衛星が一番いいんですよね。」

この衛星は地球を守る役割もあるんですね。そして、もう1つの「AxelLiner」。こちらはどういったサービスなのか詳しく教えてください。

衛星開発ってとても長くて複雑なプロセスが必要なんです。技術があってもモノを作ればいいだけではなくて、電波でやり取りするので、周波数を調整したり、政府から許認可を得たり、ロケットを調達したり、衛星通信するための地上のアンテナの調達だったり、技術的・非技術的なあらゆるプロセスを経る必要があります。これまでは、別々の人たちがやっていたので、そうすると自分たち衛星欲しいなと思ったら、宇宙のプロでないとできなかったんです。我々はこれらすべてを経験してきたので、これをパッケージ化してワンストップで提供しますというサービスです。」

勝手なイメージで、やはり宇宙のこととなると何をやるにもお金がかかるというイメージがあるんですが、実際にお金はかなりかかるんですか?

「お金は結構かかりますね。やはり小さい衛星であっても、作るのに〇億、打ち上げるのにプラス〇億とかかってしまいますね。」

それだけのお金が掛かっている中、「いざチャレンジして失敗した」というようなニュースを聞くのですが、そうなったときのお金のリターンはあるんでしょうか?

打ち上げっていいロケットと言われていても、成功率95%ぐらいで20回に1回失敗してしまうくらいの起きうることなんですよね。それで打ち上げを失敗してしまったら使えなくなってしまい、それから5年ぐらい売り上げが立つはずだったものがなくなりますので、それ専用の宇宙保険をかけたりしますね。」

宇宙保険なんてものがあるんですね。この「AxelLiner」なんですが、中村さん的にユニークだなと思ったお客さんのサービスの使い方がありましたら教えてください。

「まだサービスが始まったばかりなので、びっくりするようなものというのはまだあまりないんですけれども、ユニークなものだと「宇宙葬」はアイデアとして出てきています。」

宇宙葬というのはつまりは遺骨を打ち上げるということですか?

「そうですね。衛星が上空に来るたびに、お祈りできるという発想もあるみたいです。」

1人のためにロケットをあげるとなると、ものすごいお金かかると思うのですが、みんなでお金を出し合って、宇宙葬がしたい人たちがある程度集まったらロケットを打ち上げることなんかもできるんですか?

そのシェアするっていう考え方がすごく大事で、やはり何億円ってすごく高いじゃないですか。我々のサービスの最初は、「衛星用の部品って宇宙で動かしてみないと、なかなか我々怖くて買えない、けど試したい!」という人は世の中にたくさんいるですよね。そういった人たち向けに、衛星の中を部屋に区切り、その1個1個に入れて部品を入れて打ち上げることによってコストをシェアできるんですよね。こういった“シェア”する衛星は来年打ち上がります。」

宇宙がより現実的になりますね。この「AxelLiner」を利用している企業さんはどのような用途で衛星を利用しているんでしょうか?

「我々がやっているような画像を利用したものでもいいですし、エンタメ的に宇宙をうまく活用している企業さんもあります。」

さまざまな用途で利用してもらってノウハウが積み重なれば、どんどんコストも安く仕上げる方法も確立されていくわけですね。今何かチャレンジしているプロジェクトはありますか?

「今まで11基打ち上げているのですが、来年衛星を7基同時に打ち上げる予定があります。我々量産を始めていて、これもすごく大きなチャレンジなんですけれども、一気に数を増やしていくことによって、世界中の観測の頻度を上げていくことができますから、これでまた新しいビジネスにつながっていくと思っています。」

ちょっとした疑問なのですが、今世界中で衛星が打ち上っていると思うのですが、衛星同士はぶつからないんでしょうか?

「時々衛星同士がぶつかる事件もあるんですが、ただ宇宙ってすごく広いので、そんなにあちこちでぶつかっているわけじゃないんです。それでもぶつかりそうになると、アラートが鳴り、その際は避ける判断をするケースはあります。」

最後にこれまで乗り越えてきたハードルを教えてください。

「“宇宙ベンチャー”って、すごく特殊な会社のように聞こえるんですけども、会社は会社ですので、同じようなスタートアップが抱える問題はあるんです。私自身も初めての起業家の経験だったので、技術やビジネスをずっと優先してやっていて、どうしても“人”の方がおろそかになってしまい、組織づくりやカルチャー作りの部分をおざなりにしていたことから、組織が一度崩壊しかけるようなことも経験しました。そこからもう一度、0からカルチャーを作り、より成長する過程は非常に大きな苦労でした。」

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